人口世界一が目前 インド、内需主導でさらに投資機会 – 日本経済新聞

Home » 出生率 » 人口世界一が目前 インド、内需主導でさらに投資機会 – 日本経済新聞
出生率 コメントはまだありません



野村アセットマネジメント北薗雅一氏(左)、演説するモディ首相(右)

 世界で人口が最も多い国といえば中国。ただインドが早晩、中国を追い抜く見込みだ。中国の人口は13億7900万人(2016年、世界銀行調べ)なのに対し、インドは13億2400万人(同)。合計特殊出生率(女性1人が生涯に生む子供の数)は1979~2015年に実施された「1人っ子政策」の影響で中国が1.6(15年)なのに対し、インドは2.4(同)と高い。

 年率7%台の経済成長を保ち、株価も右肩上がりのインド。好調の背景は何か。日本の個人投資家にとって投資妙味はあるのか。ファンド関係者やエコノミストなどの意見を基に探っていこう。前編ではインドの足元の経済統計を見た上で、昨年以来、純資産総額が急増している投資信託の担当者のインタビューをお届けする。

■新税GST導入で企業に弾み

 インドの実質GDP(国内総生産)成長率は2016年で7.1%。中国(6.7%)やフィリピン(6.9%)を上回る高水準だ。さらに、労働人口の伸びを背景に潜在成長率が上昇し、GDPの伸びは加速するとの見方が多い。国際通貨基金(IMF)によると、インドのGDP成長率は17年で7.2%、22年で8.2%という。日本経済新聞社と日本経済研究センターがエコノミストに経済見通しを聞く「アジア・コンセンサス」調査(6月9~30日実施)によると、インドの実質GDP成長率予想は17年、18年、19年で7.4%、7.7%、7.9%だった。現地エコノミストの間では「新興企業の成長、インフラの発展が雇用の拡大を促す」などの前向きな評価が多い。

インドの独立記念日に演説するモディ首相(インド報道情報局提供)

 財政赤字の比率はおおむね低下傾向だ。GDPに対する財政赤字の比率は4%を切る水準。銀行貸し出し成長率はやや鈍化傾向にあるものの、債務不履行率は上昇に歯止めが掛かっており、不良債権の増加に対する懸念はやや後退している。米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングはインドの長期債務格付け(外貨建て)を「トリプルBマイナス(BBB-)」と、ぎりぎりではあるが「投資適格級」と位置づけている。

 インドの経済指標も、足元では大きく落ち込んでいるものは少ない。7月にGST(物品サービス税)が導入されたばかりだが、「消費の落ち込みは一時的で、中長期的にはむしろプラス」との前向きな見方が目立つ。新税により企業の税務処理が簡素化され、国内29州の間で、役人に賄賂を払わなくても州境を超えて商品を移動させるのが容易になるからだ。6月のサービス業のPMI(製造業購買担当者景気指数)は53.1と、判断の分かれ目である50を上回っており、「サービス業の好調さがインド経済をけん引している」(第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミスト)との声が出ている。

 新興国株式に日本の個人投資家マネーが流入しているなか、個別国で流入が大きいのはインド株に投資する投信だ。中でも野村アセットマネジメントの「野村インド株投資」は16年以来急速に純資産総額が増えており、今年7月末時点で前年同期比4倍弱の4197億円に達した。

■モディ政権への期待強いがキーマンリスクも

 新興国株に関心を持つ個人のマネーをここまでひき付けるインドへの投資の妙味とリスクについて、野村アセットマネジメントのチーフ・プロダクトマネージャー、北薗雅一氏に詳しく聞いてみよう。北薗氏は同ファンドに関し、運用拠点のシンガポールと緊密に連絡を取っている。

――野村アセットマネジメントの「インド株投資」に急激な資金流入があるが、理由をどう見るか。

 「インド経済は14年5月からのナレンドラ・モディ政権への移行で大きく変化している。モディ政権以前の連立政権時代はほとんど何も決定できず、双子の赤字(財政赤字と経常赤字)問題が深刻だった。モディ政権に入り経済改革(モディノミクス)加速への期待が強く、世界の投資家のマネーをひき付けている」

――インド経済の概要をどうとらえているか。

 「インドは働く世代の人口が増える『人口ボーナス期』に入っており、中間所得層を中心に消費が拡大していく。足元では7月12日発表の6月の消費者物価指数(CPI)が前年比1.54%上昇という低水準にとどまったため、インド準備銀行(中央銀行)の一段の利下げによる消費刺激の期待も出ている。ただ昨年に続き今年のモンスーン期もしっかり雨が降っており、農産物の価格は安定する見通し。内需が堅調に拡大するとの見方が出ている」

――インドの通貨や株式相場には不安定なイメージもあるが。

野村アセットマネジメント 北薗雅一チーフ・プロダクトマネージャー

 「確かにインドルピーは13年夏に急落し、『フラジャイル5(脆弱な5カ国)』の一角を成した。ただし7月末は1ドル=64.2ルピー前後、1ルピー=1.72円前後で落ち着きを見せている。インド中央銀行はラジャン前総裁以来のインフレ対策などが奏功し、通貨の相場は落ち着きを見せている。株式相場は今年に入り、上昇傾向が鮮明。インドの主要株価指数『SENSEX30』は昨年末比で22%上昇した(7月末時点)」

――新興国の企業の多くは世界全体の需要の伸びで利益を得ており、新興国の成長を買いたいときに新興国株に投資しても意味が乏しいとの指摘がある。インド株の投信についてはどうか。

 「インドの株式市場については、基本的に内需主体の銘柄構成と認識している。MSCIインド・インデックスの業種構成(6月末時点)を見ると、上位から金融(24%)、一般消費財・サービス(13%)、生活必需品(10%)と続く。インドでは『メイク・イン・インディア(インドでの生産を)』という輸出・製造業振興策があるように、製造業の育成が課題となっている。輸出関連株といえばソフトウエアの受託生産をするIT(14%)、ジェネリック(後発)医薬品などのヘルスケア(7%)ぐらいだ。内需の構成比率が高く、消費拡大で着実に伸びていくだろう」

――投信「インド株投資」ではどのような銘柄に投資しているのか。

 「6月末時点で、12%と組み入れ比率トップの銘柄はHDFC銀行。2位はHDFC(8%)だ。HDFCは住宅ローン専門の金融公社。モディ政権は『2022年までに全国民に住居を』のかけ声のもと、人口増を視野に入れ、低・中所得者層向けの住宅供給を進める方針。これに応じて住宅ローンの需要は広がっていく。3位のたばこのITC、7位のイエス銀行も内需銘柄だ。4位のマルチ・スズキはインド社会に深く根付く日本系の自動車メーカー。同国向けに自動車を量産しており、れっきとした内需株といえる」

――最後に、インド経済のリスクをどう見るか。

 「いわゆる『キーマンリスク』は無視できない。モディ政権のナンバー2にジャイトリー財務相がいるが、リーダーシップという側面からいえばモディ氏に比べ劣る。政権に万一のことがあれば、改革期待が大きいだけに景気を冷やしかねない。次に原油価格の上昇リスク。消費大国インドでは原油を輸入で賄っているので、原油高は消費を冷やす方向に働く。もっとも1バレル=45ドル前後(7月中旬時点)の原油価格が急上昇するとの見方は少なく、大きなリスクとはとらえていない」

◇  ◇  ◇

 日本で個人マネーを集めるインド株投信についても、内需銘柄をメインに組み込んで成長の果実をもぎ取ろうとしている様子がうかがえた。では現地インドでは、モディ政権はどのように期待されているのか。次回のインド・後編では商都ムンバイで活躍するエコノミストのインタビューをもとに詳しく見ていく。

(マネー報道部 南毅)

本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。





コメントを残す