なぜ地方の米農家にクラウドファンディングが必要なのか

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2017年03月27日 07時00分更新

文● 櫻子

 2月の話になるけれど、六本木のチアカウンターという店で面白いお米を食べさせてもらった。鳥取・伯耆地区のコシヒカリで、ブランド名は「泉米(いずみまい)」。そのとき初めて披露されたお米だ。香りはおさえめ、甘味もひかえめ、やさしい味わい。噛むたびに味わいがあり、刺身などおかずの味を引き出すよさがあった。鳥取には千代むすび酒造「こなき純米」、中川酒造「強力(ごうりき)」のように肴が進む辛口の酒が多いけれど、泉米も鳥取のよき脇役文化を継ぐ味だ。

 泉米は、生産者がクラウドファンディングサービス「キッチンスターター」で支援者を募って開発したお米だ。お米の食味を決めるのは、土壌、水、肥料だ。泉米は化学肥料ではなく日本海の海草を肥料に使っていると生産者の方に教えていただいた。鳥取が位置する日本海は「中海」と呼ばれる。ミネラルが濃く、海流の関係から海草が大量発生するため、江戸時代以前は海草肥料がよく使われたそうだ。

 「海草を加工し、ペレットにして元肥(もとごえ)にしているんです。今年で3年目、1年目はダメでしたが、だんだん甘味や食味も上がってきました」

 昔ながらの天然由来肥料で味わいある米を作る。こうして育成に工夫をこらす農家の姿はいわゆる地域農業では見えづらい。通常、農協に出荷されたお米は外観や粒の大きさから「一等米」「二等米」と等級評価され、ひとくくりにパッケージされるからだ。キッチンスターターの渡辺浩志さんは、こうして地方に埋もれる優秀な生産者たちを、クラウドファンディングの力で全国に発信したいと考えている。

 「優れた生産者は世の中にいても苦しそうにしています。一流店で優れた生産物を料理として食べてもらい、知ってもらい、ファンになってもらうことで、少しでも流通に協力ができればと思っています」

 泉米はパッケージにも工夫をこらす。ワインのようなボトルケースの装画を描いたのは地元出身の日本画家・綾木いづみさんだ。絵は鉱物由来の顔料を塗り重ねて、立体的に描いたもの。ラピスラズリや青銅を砕いた群青色、孔雀石を砕いた青緑色など、さまざまな色を丹念に重ね、味に深みを出していく。「日本画は油絵等に比べると発色が地味ですが、重ねることでさまざまな色が見えてきます。(おかずを引き立てる)ごはんにも通じるものがあるのではないでしょうか」

 コーヒーの世界では、上質な豆を「スペシャルティコーヒー」と呼び、スペシャルティコーヒー生産者とコーヒー会社が直接取引する、いわゆるサードウェーブ文化が浸透している。泉米のようなクラウドファンディング米も、こだわりの生産者と消費者を直接結ぶ点は同じだ。おいしいお米はスーパーや街角の米専門店だけでなく、農家のおじさんから直接買える時代になった。うちのお気に入りは“くまモン米”こと「森のくまさん」。味が好きなのでついついくりかえし買ってしまうけど、これからは泉米のような「サードウェーブ米」を選んでみるのも楽しそうだ。

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